2014年08月30日

年内の出版予定



◎年内の刊行予定


エッセイ集『反逆する風景』鉄筆文庫

著者:辺見庸
解説:藤島大
装丁:戸倉巌(トサカデザイン)
ISBN:978-4-907580-01-8
定価:本体700円+税(予価)
発売日:2014年10月27日(予定)


最新小説集『カラスアゲハ』(鉄筆社刊

カラスアゲハ.JPG

著者:辺見庸
収録作品:「カラスアゲハ」「アプザイレン」「まんげつ」(書き下ろし)「霧の犬」(書き下ろし)
装丁:名久井直子(予定)
ISBN:978-4-907580-02-5
定価:本体1,600円+税(予価)
発売日:2014年11月11日(予定)
鉄筆社…teppitsu@ybb.ne.jp


対談『絶望という抵抗――辺見庸✕佐高信』(週刊金曜日刊

発売日:2014年11月中旬(予定)
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日録1―1



私事片々
2014/08/30〜

空に咲く花 8月30日.JPG

・昨日朝、大腸内視鏡検査のための大腸洗浄液を病室で飲んでいるときに、2人に死刑が執行されたことを知る。いつも不意だ。だれか顔をかくした、たぶんまだ若い役人が、いい調子で「国家」を体現している。こうやって日常の虚を衝いてくる。梅ジュース味の溶液の入った紙コップをもつ手がふるえる。怒りからか。悲しみからか。いや、たぶん屈辱からだ。どうにもならない日常にいることの辱めからだ。日常はじつにうまくしくまれている。死刑の執行を知ったからといって、わたしは腸内洗浄をやめない。なんどもなんどもトイレにいく。じぶんをからっぽにする。だれも日常の手をやすめはしない。なんとなく死刑の共犯にされていく。それどころか、共犯とさえおもわない。死刑を生ゴミ処理ほどにも感じはしない。気にしない。だれもさほどにじぶんを恥じてもいない。みな、いつものようにランチを食うだろう。コーヒーを飲むのだろう。夕刻前には死刑など忘れるだろう。夜にはテレビのニュースでもやらない。日常はすこしも壊れやしない。わたしは数時間後、車椅子で内視鏡センターに運ばれ、血圧を測られ、麻酔の点滴をされ、検査台によこたわり、肛門にゼリーを塗られ、「それでははじめます」と告げられ、尻から黒く冷たい管を突っこまれる。「痛くないですかあ……」。ひとが2人、縊り殺されたというのに。「痛くないですかあ……」。「ガスだしてくださいよお……」。わたしはなにをしているのか。なにをされているのだろう。いったい、なにをしたくてこうしているのか。意識がうすれる。絞首刑にされた男たちは、もう遺体を浄めてもらっただろうか。荼毘にふされたか。執行担当刑務官は二日酔いか。吐いたか。音もない。におわない。なにも残らない。それで、みながたすかっているのだ。けふ午後、昨日の死刑について、ある善人が遠慮がちにつぶやいた。すこぶるつきの善人が。「だれかがやらなくちゃならないんですから……」。それにたいし、がまんしてなにも言いはしなかった。ただ、顔にみるみる残忍な怒気がわいた。たとえようもなく残忍な。それがじぶんでわかった。抑えなかった。怒気がわくにまかせた。悪意がないというのは手がつけられない。エベレストにのぼった。(2014/08/30)

死刑執行日のガード下.JPG

・せめて死者たちに聴かせてやれよ。だめだ?あの歌のなにがよくないというのだ。あのだみ声がわるいか。タバコくさいか。酒くさいか。シャブくさいか。なら、おまえは聴くな。とっとと帰れ。金勘定でもしとれ。A SONG FOR YOU . レオン・ラッセル。なにが悪い。みかが今朝、リベリアに発った。正解。おれも行きたかったな。誘ってくれてありがとう。中野君、会えなくてごめんね。ほんとうは会えたんだけど、気持がずいぶんたてこんでました。ハルさんは昨日、光化門広場に行った。ドットウの絵の話、よかった。新聞なんかじゃわからない。危機がほんとうに危機であるとき、それは危機を感じられなくなったとき。エベレストにのぼった。尾根で1970年のA SONG FOR YOUが聞こえてきただけのことだ。1970年の、だ。タバコをのんだ。深々と吸った。うまかった。しびれた。(2014/08/31)

今年最後のセミ.JPG

・鉄筆文庫版『反逆する風景』のまえがきを書く。送稿した。締め切りは3日。a song for youがまだ耳についている。なぜだ。声だ。いまはジジイのレオン・ラッセルが若かったころのあの声。憂うつな喇叭。なにが悪い?江ノ島のきったない岩にへばりついたフジツボのような、ダメな肛門にみまがう、おちょぼ口をした男Aに、つきしたがう者どもはどうぞつきしたがえばよい。フジツボ口とそれによってなされたかもしれない美しい国のクンニ(訓尼)についての連想を、詩なり俳句にする者はそうしろよ。ああ気色わるい。Aよ、おれは早く、いや即刻だ、おまえに消えてもらいたい。民主主義とかなんとか以前の、これは人間生理の問題だ。おれはおまへとおまへの仲間をどこまでも差別する。である以上、おまえたちもおれを徹底的に差別するだろう。結構。OK牧場。どちらかがぶっ倒れるまでやりませう。けふはレオン・ラッセルの声を耳から消去するべく四苦八苦。気がついたら、カート・コバーンのCome as You Areが耳にびったしはりついていた。そこで一句。訓尼するアホがあたまに屁をひられ。臭桜子。エベレストにのぼった。寝る前、キャメル3本喫った。うまひ。Take a rest, /as a friend, /as an old memoria,/memoria, memoria,memoria…(2014/09/01)

ムラサキシキブ9月1日.JPG

・黄色い柚子を1個、上着のポケットに入れて、イカを釣りにゆくのだ。真面目で冗談のない透明なマイカを。エンペラがうねうねし、ぴらぴら光る。わたしゃスルメイカを釣りにいきまする。イイダコの形の、赤い疑似餌は、むこうに用意してある。おれはまっ黄色の柚子を1個もっていけばいい。あとはぜんぶほっぽって(ここが肝心)、犬連れでイカを釣りにゆくのだ。ぜんぶほっぽって、ね。融通のきかないマイカちゃん。さっぱりもりあがらないマイカちゃん。サングラスかけ、くわえタバコでイカを釣る。ラークだ。ラークを喫う。イカ釣りにはラーク。釣ったらすぐにばらして塩辛。指にイカ墨。舐めます。うまひ!柚子かける。ぽっぽ焼き用の七輪も醤油も日本酒もむこうにある。犬にはイカを食わせない。腰抜ける。けふ、エベレストの近くまで行ったが、清掃中だったため、のぼらなかった。清掃?だからどうしたというのだ。歯医者に行った。オタバコハオヤメニナッタホウガ……。やかましい。郵便局の青年が本を1冊届けてくれた。笑顔で。白水社の新刊、マリオ・ジャコメッリ『わが生涯のすべて』。郵便局の青年、昨日の拙句をよっぽど気に入ってくれたか、満開のダリアのようにうれしそうだった。こんどダフネ1号店に誘おうかな。JSFに。午後、南口に爆撃があった。(2014/09/02)

疾走.JPG







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