○終われない歴史
長崎に雪が降ったとメールがあった。病室の窓から見たと。
ハルツームから連絡があった。中央アフリカ時間は、協定世
界時 (UTC) を2時間進ませた標準時である。とくに問題はない。
R・D「世界が世界史の担い手であったことはない」「人類の
歴史はつねに特異な片隅で形成されたのだ」
「不幸な意識」について。「人間はじぶんで思うような存在
じゃない」「人間が自己についていだく観念と人間の現実を混
同してはならない」。ウイルス側からみれば「不幸な意識」な
んてどうでもいい。宿主たりうるかどうか、だ。
この大崩壊時代にあっては、あらゆる「真実」が too good to be
trueとみなされる。そのような縒れた暗がりをつたう含み笑いに
耳を澄ます。終わりたくても終わることができない時間を、静かに
狂いつつ、ひたすらくり返す。朝は、バルトーク絃楽4重奏曲。
窓を、ほんの少しだけ開けて雪を見たらしい。その窓は海側だった
か、坂側だったか。大事なポイント。
明日からはますますひどくなるだろう。それでも終われないのだ。
しかし、「人類共通の敵」という言い方をこのまない。人類共通の
敵とは、すなわち人間だし、言い方がつまらない。
ハルツームに行きたい。バタンバンに行きたい。チッタゴンに行きた
い。長崎に行きたい。霧。