2016年06月01日

文芸・評論作品選


◎『日中の120年―文芸・評論作品選』が完成!


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労作である。張競/村田雄二郎・編の『日中の120年―文芸・評論作品選』全5巻(岩波書店)がこのほど完結した。これこそニッポンと中国の関係を知るための知的宝庫である。軽侮と野望、憎悪と友好によってあざなわれる関係史の実相は、年表的事実の羅列ではぜったいに理解不能である。日中関係がまたも悪化するなか「日清戦争前後からの、(両国の)作家・文人・思想家・学者・革命家・政治家など、様ざまな書き手による、旅行記・随筆・詩・小説・評論・論文・文章といった各ジャンルの古典的資産を探しだし、再評価していくことは有用な知的営為」だとする刊行目的は、迂遠なようでいて、正鵠を射ている。言いかえれば、〈日中120年のいつわらざる内面史〉がこれである。

収載された作品には、金子光晴、小林秀雄、武田泰淳、竹内好、藤田嗣治、巴金、郁達夫、中野重治、茅盾、老舎、高村光太郎、桐生悠々、汪兆銘、高橋和巳、胡適、保田與重郎、謝泳螢、張承志・・・いや、やめよう、きりがない。要すれば、これは、120年間〈われわれは中国と中国人をどうかんがえ、かれらはニッポンとニッポンジンをどうまなざしていたか〉の、巧まざる「双方向的告白集成」なのだ。編集協力者や担当編集者に友人、知人がいて、拙作「東風は西風を圧倒したか」が第5巻(「蜜月と軋み」1972〜)に収録されているから言うわけではない。この作品選は一読にあたいする。『増補版 1★9★3★7(イクミナ)』(河出書房新社)の副読本として、あるいは『日中の120年―文芸・評論作品選』の関連本として『増補版 1★9★3★7(イクミナ)』も読まれるべきである。

わたしはまだ完読していない。一日2、3篇を舐めるように読んでは、ため息をつき、回想にふけるものだから、読みきるのに時間がかかる。昨夜は巴金の「日本の友人へ」(1937年10、11月)と泰淳の「土民の顔」(1938年)をくりかえし読んだ。じつにつらく贅沢な評論作品選である。いつか,だれかが,どうしてもやらなければならなかった仕事だった。このような手間をかけなくなると、本にはなんの意味もなくなる。発行部数は知らないが、たぶん、いくらもないだろう。しかし、だからこそ『日中の120年―文芸・評論作品選』全5巻は、記憶の宝物である。(2016/07/30)
posted by Yo Hemmi at 00:00| お知らせ | 更新情報をチェックする