2018年05月30日

石原吉郎


◎もっとも暗黒な時代

石原吉郎がこう記したのはたしか1972年ごろであった。
「いまは人間のこえはどこへもとどかない時代です」。
あれから46年がすぎた。「じぶんの声はどこへもとどか
ないのに、ひとの声ばかりがきこえる時代です」。70年
代につくづく同感した。

日本がもっとも暗黒な時代にあってさえ、ひとすじの
声は、厳として一人にとどいたと私は思っています。いま
はどうか。とどくまえに、はやくも拡散している」。若い
ころ、ここを気にした。いまは、きっとそうなのだろうと
おもうのみ。

暗黒な時代にあってさえ、ひとすじのことばは他者にとどい
たのだが、いまはとどくまえに、はやくも拡散してしまう。
つまりは、さらにもっと暗黒の時代に突入した。石原は民主
主義にその因をもとめたりしたが、ちょっとちがうだろう。
資本だ。資本の運動がことばをことごとく白化させ、無効に
した。

(曠野を一頭の馬が疾駆する。馬上のものがおとこかおんなか
わからない。騎手はひとしれず狂う。朝焼けにむかって走る。
馬上で、ときどき凪ぐ。ときどき狂う。黙って口をむすんで。
馬上のものは狂人である。だれにそれがわかるというのか・・・)

いまは戦時期よりも内面が廃れているとすれば、石原のいうと
おりなのだ。ヘルパーさんがジャム入りのコッペパンを買って
きてくれた。きのう、塩辛もろた。石原はスマホをもたずに
すんだ。ひとつのパスワードももたずにすんだ。それだけでも
しあわせだった。













posted by Yo Hemmi at 17:29| お知らせ | 更新情報をチェックする