◎「汽車より悲しいものはない」
(『プリーモ・レーヴィ全詩集ーー予期せぬ時に』「月曜日」より)
鬱悶を読む。たどる。なぞる。うなる。『プリーモ・レーヴィ全詩集
ーー予期せぬ時に』(竹山博英=訳 岩波書店)。ここに、知ってい
るレーヴィと未だ知らぬレーヴィがいる。汽車より悲しいものがない
わけは、「決められた時刻に出発し、/発する声は一つしかなく、/
走る道も一つしかない。」からだ。
浮揚することはない。この重量にたえるか、押しつぶされるか。訳者
解説のなかの「レーヴィの詩論」――《パウル・ツェランについて》
が、もんのすごくきょうみぶかかった。ははーん、ふーむとおもふ。
(ついで、これは内緒だが、スターリニストの発想法について考えを
めぐらす。レーヴィはスターリニストではない、むろん。スターリニス
トは往々、みずからをスターリニストとは自覚しない。)
割の合わないことをやっている者こそさいわいあれ! でもさ、パシェ
の『母の前で』(根本美作子=訳)が、あれほど豊穣な文と思念の宝が
だよ、初版僅少部数だろうに、未重版とはなあ。にもかかわらず、
『母の前で』は、だれがなんといおうが、(わたしにとって)最上級の
1冊でありつづける。
割の合わぬことをやっている者にさいわいあれ!
一方、わが反社的℃黒カ集『純粋な幸福』(毎日新聞出版)は来月、
見本ができる。
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