◎工藤正廣著『アリョーシャ年代記』
けふメールがあった。「工藤正廣さんがご自身でお書きに
なられた長篇小説『アリョーシャ年代記』(未知谷)が全
3冊で完結の運びとなりました」という。ついては3冊そろ
えておくりたいので・・・云々。大ニュースだ! 熱波のなか
でめまいがした。
工藤さんにはなんどとなくお目にかかったことがある気で
いるけれども、よくかんがえれば一度もない。最初はたしか
ロープシンの『漆黒の馬』(晶文社 1968年)だ。若き
工藤さんが翻訳し、高橋和巳が解説を寄せたそれを、わたし
は拳銃のようにもちあるいたものだ。
『蒼ざめた馬』も工藤訳で読んだ。メールの差出人は「『ド
クトル・ジヴァゴ』の訳者」として工藤さんのお名前を掲げ
ている。たしかに『ドクトル・ジヴァゴ』も名訳である。だ
が工藤さんの訳業はひろく長く深い。
『アリョーシャ年代記』についてわたしはまだ知らない。わ
たしが知っているのは、工藤さんの仕事への超絶的ともいえ
る持久力と深みだ。よい仕事というのは、かならずといって
よいほど割が合わない。そんなことを百も承知の工藤さんと
未知谷にあらためて敬意そして羨望!
北海道でお会いする約束をまだはたしていない。いただいた
豪華な(たぶん世界一立派な)木製書見台のお返しもしてい
ない。近々『アリョーシャ年代記』がわたしの書見台にのる
はずだ。どこからかタバコのにおいがする。工藤さんのお手
紙には工藤さんがいつもタバコのにおいになって入りこんで
いた。