○駅のエレベーター

港町のあのエレベーターは特別だ。黒ずんだ人
びとが吐きだされてくる。古い油や干もののに
おいとともに。尽れた人びと。金持ちはあのエ
レベーターにはのらない。
エレベーターといったって2階しかない。なにか
考えるとたちまち考えが崩れてしまう。田部井
はいなくなった妻をさがしている。妻ー失踪ー
追跡・・・は論理的に整合する。そこだ。
なんとなく論理的に整合するように見えれば、そ
れでいい。実際には整合しなくても。じぶんにも
他人にも一応の説明がつく。おざなりでも。
いつもいくカフェが見知らぬ客でいっぱいだった。
なにかあったのか。