○『ヤンバルの深き森と海より』

目取真俊という男がいる。無口だ。愛想がない。おべんちゃらを
言わない。ほとんど笑わない。内心は笑うのかもしれないが、顔
にはださない。なにかを衒うということがない。居ずまいが、だ
が、大事なことを感じさせる。「独り」ということ。独りという
のは、激しく饒舌であるということだ。自己内対話として。
新刊『ヤンバルの深き森と海より』(影書房)が送られてきた。
沖縄とヤマトゥンチューをめぐる著者14年間の心象。きわめて貴
重なテキストである。
「世界各地の反戦・反基地闘争に比べれば、辺野古の闘いは穏や
かすぎるくらいだ」(2015年)。目取真俊は知っている。ひとが
何人か殺されでもしなければ、国家はうごかないということ。民
主的な闘争などありえないこと。最期は「独り」ということ・・・。