2020年04月09日

私たちの日常


『たんば色の覚書』

たんば.jpg

世田谷の病院に行く。ロイヤルホストでオムライスセット。
店員(全員マスク)みな親切。けふがまるで「特別な日」で
もあるかのやうに。ひとがまだ親切かどうか、こちらが神経
質になって眺めていただけなのかもしれない。

帰宅したら、『たんば色の覚書ーー私たちの日常』(角川文庫)
の重版見本がとどいていた。不思議におもふ。単行本は毎日新
聞から2007年、文庫初版は2011年と奥付にはある。文庫解説は
小池真理子さん。

茫然とする。2007年にも2011年にも、"日常の崩壊"を予感か期
待か、していたような気がする。ただ、こんにちのような瓦解
はイメージしていなかった。音のない、しかし着実な崩壊・・・。

あれからなにがあったのか。すぐには辿れない。「社会の共同性
に対する強い違和感・・・」と表4にはある。3.11を経てもそれはあ
る。というか高じている。災禍そのものより、腕を組んで"団結"
し声を合わせて歌いたがる質の共同性を怖じ、怪しみ、甚だしく
は敵視さえする癖。

2009年にわたしは犬と同居しはじめ、小池さんはことし1月に夫の
藤田宜永さんを亡くした。そう、たくさんの知己を喪った。が、古
い井戸の底を、わたしはまだしげしげとのぞきこむまではしていな
い。井戸のへりから身を乗りだすまではしていない。

底に、自分の顔が映るのがいやなのか。










posted by Yo Hemmi at 17:49| 日録 | 更新情報をチェックする