○錆くさい街

タンポポの陰に青い小さな蛇がいた。みるまにすべって消えた。
目があった気がする。うれしかった。蛇だけはマスクをしていな
いとおもった。
街は廃れていた。ファミレスのトイレがひどく汚かった。錆くさ
かった。からだほど大きな荷物をもったおんなが蹌踉とあるいて
いた。
約束をことごとくたがえた世界がたわんで沈んでいる。カフェで、
気がふれたらしい髭のおとこが、宙に話しかけている。パクパクと
口がうごく。目は鋭いのだけれど、少しも光ってはいない。
みんなオジャンだなとおもふ。
きのうもスカイプでインタビュー。「乏しさ」について話す。貧
困にかんし。「健康」について。モニターがときどきゆがんだ。
とてもまじめな女性のインタビュアーが、気のせいか、泣いている
ようにみえた。
つい2、3か月前のことでも、はるか遠い昔のことのように懐かしい
のだ。