2020年04月25日

まだまだこれからだよ


巣箱

巣箱.jpg

巣箱。けふも空き家。視床痛。助辞も繋辞も面倒くさい。
まだまだこれからだよ。まだ先。ひとの目が獣じみるのは。
記憶がある。寂れた夕まぐれ。駅前。失業者たちの目が
赤く、ときに金色に血走る。知っている。見たことがある。

忘れてしまっているのだろう。そのような時代の、かわたれ
どき。ひとの輪郭が煮こごりみたいに崩れる。瞳がなぜか
煮こごりのなかに奥まって、凝りのなかから哀れがましく、
恨みがましく光る。燐光の殺意。

60すぎの失業者がスーパーでカップ麺をまんびきして捕まり
ました。81だかの無宿者が、野球部員たちに何百メートルも
追いかけ回され、激しい投石をうけて死にました。ひとりぐ
らしの、少しニンチ入ったおばあちゃんが、アパートで飢え
死にしてました。

本ブログをご覧になっているがんのひと、パーキンソンのひ
と、ウツのひと、統合失調といわれているひと、もやもや病
のひと、反社性向のひとびと、片マヒのかたがた、神経障害
性疼痛のみなさん・・・きましたね、ついにやってきましたね!

きたということをまずかくにんして、それから、予想どおり
と思いませんか。ほぼ予感どおり。そして、ほんのちょっとだけ
〈ざまあみやがれ〉てな気分も。しかしながら、世界の全的瓦解
はまだ始まったばかり。

夕暮れの駅前では、影をなくしたおとこたちが力なく咳をして
いる。言葉と結果がたがいに反駁しあい、どこまでも空しく毀
損しあう夕暮れ。だが、まだだ。〈完了〉にはほど遠い。こんご
、おとこたちの頬骨はもっともっと高く、最終的には見ちがえる
ほど尖るはずだ。

とりあえず、すべてのアウラというアウラは剥がされたのだ。
〈自己責任〉をかたるものを信じてはいけない。ぜったいに。

『T市にて』若干。



















posted by Yo Hemmi at 14:08| メモ | 更新情報をチェックする