○『もの食う人びと』

出版社の「ビジネスサポートセンター」なる部署からお知らせがきた。
『もの食う人びと』(角川文庫)の第39刷が9月中旬に発行されるとい
う。四半世紀以上前に共同通信から単行本がだされて以来、おそらく
親から子へと読み継がれてきたのだろう。新旧の読者たちと編集者らに
あらためて感謝申し上げる。
上のお知らせととともに、『自分自身への審問』(同)3刷の見本が届
いた。著者は耄碌しても、本は残る。ときに胸を衝かれる。巻末に加藤
万里さんの解説とともに大道寺将司さんの特別寄稿が収載されていた。
題して「勘考し、覆考する」。確定死刑囚として東京拘置所に在監中に
したためてくれたのだった。
Wikipediaでは「日本の新左翼テロリスト」などとと記されている大道寺
さんは、結果的行動と人格の、連続性と不連続性とでも言おうか、わたし
の眼には過剰なほどのモラリストにみえた。すべてはあまりにも皮肉であ
る。頽廃のはてでしかない現在が、記憶の藻屑としてうち棄ててきた過去。
ああ皮肉だ。自著ながら、時間をつきやぶり、著者をいまさらしたたかに
打ちのめすのだから。
大道寺将司さんは優れた俳句を遺し、3年前に獄死した。
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