○米大統領就任式の虚妄

尿意をこらえつつベッドでNBCの実況放送をみていた。わたしは
なにを期待していたのか。そうとはっきり意識してはいなかった
が、たぶん「狙撃」である。『影きなき狙撃者』を思い浮かべた。
1962年、ジョン・フランケンハイマー監督。
おそらく銃声は聞こえない。突如、演説者の額が撃ち抜かれる。
崩れ落ちる演説者。ブレーキング・ニュース!狙撃シーンが世界を
かけめぐる。米国社会にくぐもるルサンチマンと野蛮、暴力衝動が
新しい暴発を誘発する。なんどでも。
想像は不埒だ。就任式のとってつけたような虚妄と嘘は、次なる暴力
によって、またぞろ活性化するだろう。現実が想像を圧倒する。人は
それを望まずに望んでいる。言葉はどこまでも乖離してゆく。