○轢死について

(同居犬が3本脚であるく。こわれた鞴みたいな、野太い咳。
ダニ捕りロボを買った。足が痒いので。ダニのせいと断定
したわけじゃない。視えないし)
ガリヴァの歌
必死で逃げてゆくガリヴァにとって
巨大な雲は真紅に灼けただれ
その雲の裂け目より
屍体はパラパラと転がり墜つ
轟然と憫然と宇宙は沈黙す
されど後より後より追まくってくる
ヤーフどもの哄笑と脅迫の爪
いかなればかくも生の恥辱に耐えて
生きながらえん と叫ばんとすれど
その声は馬のいななきとなりて悶絶す
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轟然と憫然と宇宙は沈黙すーーだって!
かれ以外のたれが、真の実感をもってこ
んなことを書けるか?書く資格があった
か?
「いかなればかくも生の恥辱に耐えて
生きながらえん」
「いかなればかくも生の恥辱に耐えて
生きながらえん」
「いかなればかくも生の恥辱に耐えて
生きながらえん」・・・
ここから吉祥寺 ー 西荻窪間の鉄路はそう遠くない。
五体を踏みしだく鉄と肉と骨の軋みが、いまも聞こ
えるのだ。朝な夕なに聞こえるのだ。ゴツゴツ。に
ぶいゴツゴツ。
原民喜をかたる前に、畏れよ。あの音を聞け。血を
浴びよ。そしてついに狂え。「いかなればかくも生
の恥辱に耐えて生きながらえん」・・・。
まず徹して畏れよ。畏れよ。震えろ。それが死者へ
のせめてもの礼儀だ。