○山之口貘の「ねずみ」を想ふ

生死の生をほっぽり出して
ねずみが一匹浮彫みたいに
往来のまんなかにもりあがっていた
まもなくねずみはひらたくなった
映画『自律 Autonomous』をみた。「ねずみ」を
想った。ねずみはわたしであり、あなたであり、す
べての記憶である。
ねずみは
ねずみでもなければ一匹でもなくなって
その死の影すら消え果てた
兵器を送るだけ送って、参戦はしていないと正義
をきどる米国と、心身ともに病んだロシア。じゃあ
ニッポンはなんなのだ。
たとえば「徴用工」を忘れ、あるいは忘れたふりをし
て・・・。
ある日 往来に出て見ると
ひらたい物が一枚
陽にたたかれて反っていた
『自律』はこころみに言葉を消し、轢かれたねずみを
食う。ありえないのだが、わるくはない80分だった。