○古書$ョ理

蜘蛛がカーテンをのぼっていく。刹那、殺意がはしるが
殺さない。大きくなったな、相棒。古書を整理していたら
『ネチャーエフーーニヒリズムからテロリズムへ』
がポコッとでてきたぜよ。ルネ・カナック著、佐々木孝次
=訳。どってことない。
石井恭二さんがやっていたころの現代思潮社刊。1964年初版、
73年3刷。ふっ!『ネチャーエフ』初版のころ、わたしは
現代思潮社でバイトをしていた。編集とかご立派な仕事で
はなく、返本のカバー替えとか、汚れた小口に紙やすりをか
けたりの単純労働だけれど。よく紙で手のひらを切った。
メンタム塗って、ラーメンばかり食っていた。
あのころの現代思潮社は『マルドロールの歌』やら『悪徳
の栄え』やら『コミンテルン・ドキュメント』全3巻やら
『トロツキー選集』やらをだしていて、学生らのあこがれの
まとだった。
「フランス装函入」なんてのがあって『テロリスト群像』も
そうだったな。本は売れようが売れまいが宝物だった。
「おお、ありとある治世の、ありとあらゆる国家の
殺戮者よ、そして馬鹿者よ・・・」
てなコピー(マルキ・ド・サド)もあって、パワハラセクハ
ラマタハラMETOO×××サバイバーラノベなどといふクソガ
イネンはなかった。暴力は書籍的に思考されていた。