2024年08月05日

存在の理由

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 「楽しそうですね」と独学者は、警戒するような態度で言う。
 「それはね、こう考えたからですよ」と私は笑いながら彼に
言う、「私たちはみんなここにいるかぎり、自分の貴重な存在を
維持するために食べたり飲んだりしているけれども、実は存在す
る理由など何もない、何一つない、何一つないんです」(JPS)

崖上のわたしの位置から、私鉄駅のホームが見下ろせる。幽かに
電車とレールの軋りが聞こえる。飛び込み自殺がよくある。生白
い女の脚を見たような気がする。わたしは崖上からそれを見たの
だが、見なかったことにしようとする。あるべき全体から切断さ
れて、それだけが魚のように宙に跳ねる、女の腿。

「在ってしまう」という言い方は多分正しい。詮方なく在ってし
まう。



posted by Yo Hemmi at 17:45| お知らせ | 更新情報をチェックする