
未明のチェット・ベーカーはしみる。leavingはとりわけ
泣ける。退場。同居犬ノンが未明に逝った。気がついた
時にはもう身体が硬くなっていた。棒みたいに。別室の
死の床に運ぶのは軽い棒を1本移動するごとく簡単すぎて
泣ける。15歳と11か月。
二人して横になり未明のチェットを聴く。死んだ犬とまだ
いぎたなく生きさらばう俺。聴き入る。チェットはいい。
不潔で気だるく投げやりでよい。犬が眼を開けたままなの
で瞼を閉じてやろうとする。硬化していて閉じない。瞳に
何か映っている。
わたしは未練があるがノンはさっぱりしている。明朝、業者
が遺体をとりにきて焼却、午後三時に骨壺が届く予定。通夜
もお別れの会も無論ない。首藤さん、お世話になりました。
わたしは躰にポッカリ穴が開く。穴を風が吹きぬける。
昨夜は満月だったらしい。
ガザを思え、ガザを。
いない犬の気配を探す。
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