午後、のんちが骨だけになって帰ってきた。
小さなマグカップ一つ分。
これで全部。たったこれだけ。
下が脚。中が胴。上が頭・・・ですね。
〈尻尾はどうしたんだ?〉
お得な「なごみコース」です。
「ワンちゃんの毛と爪入りのペンダントもありますが・・・」
ふざけやがって。
でも、買う。
ペンダントをつけて、骨壺を摩る。
チャラチャラと音がする。
俺の喉仏の音か。
温かい。
温かな気がする。
いまさっき犬を焼いた業者の手の温もりかも知れないのに、
きっとそうなのに、
のんちの体温だと己に思い込ませる。
柔らかな犬のお腹の温もりの記憶と記憶がいれかわる。
バカ。ばーか。
のんち・・・。
骨に声をかける。
声が出ない。
しかし、
しかしながら、
声が出ない。
(註)「総じて人は堪えうる悲しみのみを悲しむ」
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