(生後3か月のノン)
勿論、「おい、しっかりせんかい!」と自分に言い
きかせてはいる。けれども、ズルリと崩れていく。
コラープスcollapse。自己崩壊。足がもつれる。犬一
匹の死で、世界が変容する。collapseそんなバカな!
気がついたら、ケージにいつもの灰色のクッションが
ある。犬の食器には新しい水がある。トイレもある。
ケージの戸は開けてある。オシッコはないけれど、犬
は今たまたま不在という設えだ。いつものように寝た
ければ戻ってくる。今はたまたま居ないだけ・・・。
見かねたヘルパーさんの計らいだ。しかし、居間には骨が
あるのだ。白々と。厳然と。
よく「消える」犬だった。あわてて探し回る。クローゼット、
ベランダ、書斎のデスクの下。トイレ。好きなところで好
きなときに、唐突にバタリと寝る。
下から首をひねり、わたしを見上げる。しばしば皮肉ぽい、
非難がましい眼で。小さいくせに圧倒的な存在感。
15年11か月。彼女とはとことん話した。無について。無意味に
ついて。パレスチナについて。ネタニヤフを噛み殺せ!
怠惰でふしだらな、生きること存在することの懈さ、ennui
を漂わせる、音痴の犬。俺の姐御。
掠れ声で青江三奈を歌ってくれた。フフフ。含み笑いする犬。
骨。新品の。白い、あまりにも白すぎるよ。
ありがとう、のんち・・・。
ああ、どうしても足がもつれる。部屋の中で杖をつく。
collapse・・・
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