
「一般に皮肉な人の常として、彼が口をきいているとき、
彼の顔で笑っているのは目と眉毛だけである。彼の目の中
には、その場合、憎悪もなければ、邪念もないが、ただ非
常に炯眼な人々にだけ見られるような多くの機知と、きつ
ねのような特殊の狡猾さとがある。」
老婆の含み笑いのような鳩たちの声が厭だ。朝方、それで目
覚める。花火を買おうかと思う。
事態は日一日と悪くなっている。基本的な動作にも支障を来し
ている。立つ、歩く、振り向く・・・といったことが難しくなって
きた。裏腹に観念が身体を置き去りにして際限なく膨らむ。無意
識に助けを待っていて、いつか誰かがきてくれるだろうと楽観し
たりする。ゾッとする。誰も来るわけがない。
ノンがいなくなってから、すべてが崩れてきた。昨年12月16日。
こうまでひどくなるとは予想できなかった。
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