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『たんば色の覚書』
世田谷の病院に行く。ロイヤルホストでオムライスセット。
店員(全員マスク)みな親切。けふがまるで「特別な日」で
もあるかのやうに。ひとがまだ親切かどうか、こちらが神経
質になって眺めていただけなのかもしれない。
帰宅したら、『たんば色の覚書ーー私たちの日常』(角川文庫)
の重版見本がとどいていた。不思議におもふ。単行本は毎日新
聞から2007年、文庫初版は2011年と奥付にはある。文庫解説は
小池真理子さん。
茫然とする。2007年にも2011年にも、"日常の崩壊"を予感か期
待か、していたような気がする。ただ、こんにちのような瓦解
はイメージしていなかった。音のない、しかし着実な崩壊・・・。
あれからなにがあったのか。すぐには辿れない。「社会の共同性
に対する強い違和感・・・」と表4にはある。3.11を経てもそれはあ
る。というか高じている。災禍そのものより、腕を組んで"団結"
し声を合わせて歌いたがる質の共同性を怖じ、怪しみ、甚だしく
は敵視さえする癖。
2009年にわたしは犬と同居しはじめ、小池さんはことし1月に夫の
藤田宜永さんを亡くした。そう、たくさんの知己を喪った。が、古
い井戸の底を、わたしはまだしげしげとのぞきこむまではしていな
い。井戸のへりから身を乗りだすまではしていない。
底に、自分の顔が映るのがいやなのか。
posted by Yo Hemmi at 17:49|
日録
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