2023年05月21日

『入り江の幻影』

新刊『入り江の幻影』(毎日新聞出版)巻頭稿締め切り月末まで。
posted by Yo Hemmi at 18:04| お知らせ | 更新情報をチェックする

過去

「私が所有しているのは自分の肉体だけだ。まったく独りぼっちの男、
ただその肉体しか持っていない男は、思い出を固定することができない。
思い出は彼を通り過ぎてしまう。」

100回生まれ変わっても登山に興味をもつことはあるまい。割れた海胆
のように脳漿にまみれた頭たち。潰された眼。そのようなデフォルメが
なぜ可能なのか。なぜ可能だったのか。それには若干の関心がないでない。
耄碌というなら、あなたは半世紀前からすっかり耄碌していた。杖ついて
出版記念会とやらに行こうか。杖を振り回して会をぶち壊しにしてもいい
なら。せめて、せめてだね、歌はやめてくれ。




posted by Yo Hemmi at 00:09| お知らせ | 更新情報をチェックする

2023年05月19日

脇腹

「私はマダムの脇腹に沿って腕を滑らせた。すると不意に
小さな小さな庭が見えた。背の低い、枝を横に広げた木々
が生えていて、そこから毛に覆われた巨大な葉が垂れ下が
っている。至るところに蟻や百足や蛾が這い回っている。
もっと恐ろしい 獣もいる。」

出版記念会の案内状届く。登山の本。自己か人災か。そんな
ことはどうでもよい。それより、頭蓋骨を割られ四肢を砕かれ
て殺された服部はどうすればいいのか。同じく山崎たちは?
半世紀前の殺戮は時効か。あなたは忘れたというのか。

ブント→革マル→登山→出版記念会の陽気な錯乱。あんたは変わ
ったんじゃない。変節ではない。変節ですらない。半世紀前から
一貫して誠実で勤勉で声の大きな、悪意なきコンフォーミストだ
った。魯鈍はときに耐えがたい悪だ。





posted by Yo Hemmi at 17:46| お知らせ | 更新情報をチェックする